暗記

札や決まり字を覚えて迷わずに札を取れるようになった方は、とても楽しい日々を過ごしていることでしょう。しかし、格上の選手と対戦すると、ほとんど取るとこができずに悔しい思いをすることも多いのではないでしょうか?

その差を埋めるために必要なことが「暗記」です。暗記とは、場に並んだ札の配置を覚えることです。暗記ができないと、札を見つけるまでに時間が掛かってしまい、相手より早く取ることができません。競技かるたの上達において、最も重要な要素であると言っても過言ではないでしょう。

両陣合わせて50枚も並んでいる札の配置を暗記することは難しく、最初から全てを正確に把握することなど不可能に近いと思います。それでも、一枚でも多くの配置を覚えるように工夫することが大切です。今回は、この「暗記」について説明します。

スキあらば暗記

競技かるたの試合では、札を並べた後に15分間の「暗記時間」が設けられます。この暗記時間は文字通り「札を暗記する時間」です。札の認識に多少時間が掛かっても、諦めずになるべく多くの札の位置を覚えるようにしましょう。

そもそも、なぜわざわざ暗記するのかというと、少しでも早く札を取るためです。どれだけ決まり字の変化を把握していても、どれだけ手の振りが速くても、札の位置が分からなければ取ることはできません。

例えば、「む」が読まれた際に、札の有無だけを覚えている人と、札の位置まで正確に覚えている人とが競い合うとどうなるでしょうか?札の有無だけを覚えている人は、「む」と聞いた瞬間に「どこかに出札がある」と判断し、出札を探し始めます。一方で、札の位置まで正確に覚えている人は、「む」と聞いた瞬間に「あそこに出札が有る」と判断し、探すことなく出札を取ることができるのです。

これが暗記の利点です。相手が札を探している間に悠々と取ることができるのです。

なお、最初に札を並べた配置のままであれば、ある程度の慣れで全て覚えることも可能です。まず、最初に札を確認する際に、「むすめふさほせ」の順番で確認したり札が並んでいる順番で確認したりと、復数の方法を使用して確認漏れのないようにすることが大切です。

次に、友札や同音札をセットで覚えます。「あ」や「な」などの枚数の多い同音札は難しいかもしれませんが、まずは二枚札(うつしもゆ)や三枚札(いちひき)など、枚数の少ない札だけでもしっかりと覚えるようにしましょう。そうやって徐々に覚える枚数を増やしていくことで、四枚札(はやよか)や五枚札(み)へと覚える範囲を広げることができ、最終的には16枚もある「あ」の札にも対応できるようになっていることでしょう。

また、暗記時間の残り2分で解禁される「素振り」を有効に活用し、実際に取る場面を想定しながら、頭だけでなく体全体で暗記することも重要です。一字決まりの札であればスピード勝負に負けないように素早く動くイメージで、大山札であればしっかりと囲うイメージで、実際に札を取る場面をイメージしながら、札の配置を体に覚え込ませるのです。

ここまでの説明で、最初の配置に対する暗記の仕方が、多少は分かっていただけたでしょうか?

しかし、実際の試合では常に札の位置が変わります。送り札はもちろんのこと、札が一枚減った時に他の札を外側へ詰めるように動かすような小さなことであっても、暗記に与える影響はかなり大きいものです。位置が変わった札も含めて、全ての配置を覚えるのは相当に難度の高い技術です。

しかも、試合は一日に何度もあるため、前の試合の暗記を忘れて新しい暗記に入れ替えるといったことを、試合の度に繰り返す必要があります。おそらく、競技かるた界で最高位に位置する名人やクイーンであっても、完璧な暗記などあり得ないでしょう。

それでも、試合に勝つためには暗記が重要で、少しでも多くの札を覚えるように頑張る必要があります。そのためには、自分が得意な札を優先したり、相手に送った札を強く意識したりするなど、ある程度の絞込が必要です。相手陣を攻めたい人は相手陣をより強く意識したり、友札が両方ある場合に一方のみを覚えたりと、自分なりの工夫をしながら、なるべく正確に多くの札を覚える方法を見つけてください。

ちなみに、暗記は最初の暗記時間だけではなく、試合が終わるまで常に続けましょう。試合中は、相手が札を並べ直す時間や周りの人が札を探している時間など、さまざまな待ち時間が発生します。その待ち時間を有効に活用して、一枚でも多く暗記することがポイントです。

とくに誰かが揉めている時は待ち時間が長くなりますので、暗記を行う絶好のチャンスです。周りで揉めていると、その揉めている人を眺めている人がいます。揉めた時の対処法を学ぶなどの明確な目的があればよいのですが、野次馬根性で眺めているだけなら、そんな無駄な時間を過ごさずに、しっかりと自分のために暗記時間として活用してください。

スキあらば暗記です!