札の取り方

前回(素振りを繰り返し行うことで誰にも負けない速さを身につける)、「素振りを繰り返し練習して素早い動作を身につけよう」と書きましたが、競技かるたの試合に勝ちたいのであれば、素早く手を動かすだけではまだ不十分です。極端な話、どんなに素早く手を動かしていても、手が空中にあるままで札に触れなければ何の意味もないのですから。

競技かるたでは、素早く動くことも重要ですが、突き詰めると「相手よりも早く札を取る」ことが重要なのです。それでは、どのような動き、どのような取り方をすればよいのでしょうか?

今回は、状況に応じた札の取り方について説明します。

状況に応じた札の取り方を習得して札際に強くなる

押さえ手

初心者の方が自然に札を取ろうとした場合、ほとんどが「押さえ手」という取り方になるでしょう。文字通り、札を押さえる取り方です。

押え手は、出札を直接押さえるため、取ったことが一目で分かります。しかし、札を押さえるということは、そこで手の動きが止まるということですから、速さを競う場面での取り方には向いていません。

競技かるたに慣れてくると、次に紹介する速さ重視の「払い手」が多くなるため、この押え手を使う機会は減っていきます。相手が反応できていなかったり、逆方向を攻めていたりするような場合で、余裕を持って札を取ることができる状況での使用に限られるでしょう。

よって、それほど意識して練習する必要はありません。(空振り後の対応などで必要になることもありますが、わざわざこの練習に時間を使うよりも、空振りしないような取り方の練習に時間を使いましょう)

払い手

競技かるたにおける最も基本的な取り方が「払い手」です。文字通り札を払う取り方で、押さえ手のように手を札の上で止めるのではなく、手を振り抜いて札を競技線の外へ飛ばす取り方です。漫画「ちはやふる」でも札が飛んでいくシーンが何度も描かれているため、競技かるたといえば札を飛ばす印象がありますね。

押さえ手は、札を押さえる時に手が止まるため、無意識に手の速度を落としてしまいます。それに対して、払い手なら手を止める必要がないため、札を触る時点でも速度を保つことが可能です。押さえ手が上から下へと押さえる縦方向の動作となるのに対して、払い手は横方向の動作となるため、手を止めずに振り抜くことが可能であり、スピード勝負に向いています。

また、競技かるたでは直接出札に触れていない場合でも、出札を競技線の外に出せば取りが認められるため、払い手が大いに活用できます。つまり、出札の隣に並んでいる札を払うことで、その払われた札に押し出されるように、隣に並んでいる出札も一緒に競技線の外まで飛び出すのです。このように他の札で出札を押し出すことを「札押し」と呼びます。

慣れるまでは難しく感じられるかもしれませんが、競技かるたにおいて最も必要な取り方といえますので、必ず身につけてください。

突き手

前方へまっすぐに手を伸ばして札を突き出すように払う取り方です。

払い手は横方向の動きであり札押しでまとめて払う場面に適していましたが、こちらは出札へ向かって一直線に手を伸ばすため、さらにスピードを重視したい場面に適しています。外側に並んだ札であれば札押しの方が速く取れるでしょうが、正面付近に並んだ札の場合は、横から回り込んで払うよりも真っすぐに手を突き出した方が早く取れます。

払い手と比べれば使う機会が少ないかもしれませんが、それでもスピード勝負には欠かせない取り方です。払い手と同様に、必ず身につけたい取り方の一つです。

囲い手

札を手で囲って取る取り方です。

大山札などの決まり字が長い札はすぐに払うことができず、決まり字が読まれるまで待たなければなりません。そこで、ただ待っているのではなく、事前に札を囲って相手に触られないように防御しようというものです。

ただし、決まり字前に札に触るとお手付きの可能性があるため、細心の注意が必要です。とはいえ、お手つきを恐れて札から離れすぎると、札と自分の手の間に相手の手が入る隙間ができてしまい、囲い手の意味がありません。札に触らずに、それでいて相手に入られる隙間を作らない、絶妙な間隔を保つことが重要です。

この絶妙な間隔というのが非常に難しいところですが、囲い手を身につけると、大山札にも慌てずに対応できます。大山札は苦手だという人も多いので、ライバルよりも一歩先へ進むチャンスです!

渡り手

左右それぞれの札を連続して払う取り方です。

競技かるたに慣れてくると、友札や同音札をそろえずに、左右に分けて配置することが多くなります。このような場合、確実に一方を確保することが大切ですが、渡り手を使えれば、相手がどちらかを確保する前に両方を取ることが可能です。

これは、反応の速さと腕の振りの速さの両方を兼ね備えた高度な取り方であり、簡単に身につくものではありません。しかし、常に意識して何度も何度も繰り返し練習することで、徐々にできるようになっていきますので、諦めずに挑戦し続けましょう。

戻り手

相手陣を攻めつつ、自陣へ戻って取る取り方です。

渡り手が同じ陣の左右を払ったのに対し、戻り手は相手陣から自陣へと素早く手を動かします。そのため両方の札を取るのではなく、あくまでも自陣の札だけを取ります。(両方触るとお手つきです。)

競技かるたに慣れてくると、相手陣を攻めることが多くなると思います。相手陣を攻める途中で自陣に出札があると気づいた時、戻り手ができないと簡単に相手に取られてしまいます。それを防ぐために、素早い戻り手ができるようになっておきましょう。

初めから自陣のみを守ればよいという考え方もあるかとは思いますが、現在は相手陣を攻める「攻めがるた」が主流となっています。攻めを中心としつつ、いざという時にはしっかりと戻って守れるようになることが勝利への近道です。

その他

上記の他にも、囲い手破り(相手の囲い手の隙間に入り込む)や手のひらを裏返して手の甲で取る方法など、状況に応じたいろいろな取り方があります。まずは上記の基本的な取り方を身につけ、その応用として、状況ごとに自分にあった取り方を工夫してください。

競技かるたは、他のメジャースポーツほど研究されつくした競技ではありません。まだまだ発展の可能性が高い競技だと思いますので、みなさんの素晴らしい発想で、新しい取り方を見つけ出して欲しいと思います。