送り札

競技かるたでは、「相手陣の札を取る」または「相手がお手つきをする」ことにより、自陣の札を相手陣へ送ることができます。これを「送り札」と呼びます。

送り札は、自分が送りたい札を送ればよいのですが、実は奥が深く、時には試合の流れを左右することもありますので、重要な戦略の一つといえます。

今回は、送り札に関して説明します。

状況に応じた送り札を考える

みなさんが送る札を行う際の基準はどのようなものでしょうか?初心者の頃は、「苦手な札を送る」「送られた札を送り返す」などが多いと思いますが、上達するためには常に「最適な送り札はどれか?」を考えることが大切です。ただし、いざ送る時になってあれこれ考えていると試合の進行を妨げてしまうため、事前に考えておく必要があります。

事前に考えるためには、自陣・相手陣それぞれの札をしっかりと把握しておくことが重要です。そのうえで、一枚読まれるごとに変わっていく決まり字の変化を把握し、相手の狙い札を見極めたり、得意・不得意な札を探ったりしながら、状況に応じた判断を行いましょう。

送り札に正解などないため、自分が最善だと思える札を送ればよいのですが、その結果がどうであったかをしっかりと確認し、経験を積み重ねることが大切です。

よくいわれる「送り札の候補」としては次のようなものが挙げられます。

  • そろっている友札や同音札(そろっていると狙われ易い)
  • 自分が攻めたい札
  • 決まり字が短い札

あくまでも一般論であり強制ではありません。その時の状況を考えながら、自分なりの工夫を施してください。

また、送り札は、自分の感覚だけでなく相手を分析することも必要です。

例として、「いに」「いまこ」「いまは」の3枚について考えてみましょう。自陣に「いに」「いまこ」、相手陣に「いまは」がある場合の意識はどうなるでしょうか?

互いに一般的な攻めがるたの場合、「い」の札が読まれた時は相手陣の札に手を伸ばすと思います。その際、相手陣の札は「いまは」一枚だけなのに対して、自陣には「いに」「いまこ」の二枚があります。そうなると、相手陣の札が読まれる確率は三分の一しかなく、互いに相手陣を攻めている状況を考えると、自分が札を取れる確率も三分の一しかないといえるでしょう。ということは、この確率を変えるためにも一枚を相手へ送り、自陣一枚、相手陣二枚とするのが賢明です。

しかし、互いに守りがるたの場合は話が逆転しますので、自陣二枚の状態を保つため「い」の札を送らずに、他の札を候補として検討しましょう。また、一方が攻めがるたで他方が守りがるたの場合は、攻めたい側の思惑と守りたい側の思惑が一致し、最終的に守りがるたの方が二枚持つことになるでしょう。

このように、互いのスタイルによって送るべきか保持すべきかが変わりますので、しっかりと相手の戦い方を観察した上で送り札を考えるように心がけましょう。

なお、「いに」「いまこ」のどちらを送るか迷った場合には、「いに」を送ることをおすすめします。相手陣に「いまこ」「いまは」がそろってしまうと、こちらから狙いやすくなると同時に相手も守りやすくなってしまいます。「いまこ」「いまは」がそろっているということは、決まり字が「いま」であり、自陣に残した「いに」と同じ二字決まりです。どんな状況でも絶対に攻めてくる相手であればよいのですが、普通に考えると、いくら攻めがるたの相手でも守りに入るでしょう。

「いに」を送り相手陣を「いに」「いまは」とすれば、決まり字が二字と三字の二種類になるため、相手も守りづらい状況となるため、自分のスタイル通りに攻めてくる確率が高くなります。また、こちらが相手陣を攻める際は、「い」と聞いた時点で「いに」を攻めつつ、「いま」と聞こえたら「いまは」へ転ずることも可能なため、タイミングも合わせやすくなります。

このように、状況に応じた送り札を選択することが勝敗を左右する大きな要因となることがありますので、面倒だと思わずになるべく考える癖をつけてください。すぐには難しいでしょうが、常に考え続けることで、状況に応じた適切な判断ができるようになるものです。